BEAUTIFUL WORLD.

L'lle St.Louis,paris,france 19:00pm

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何年か前の冬、母を連れてパリに来た。
母の好きなアールヌーボーを見せてあげようと思って、
16区のギマールの作品めぐりをした。

一通り、見終えて、タクシーで帰ろうとしたが、
見当たらないので、RERの
ケネディ・ラジオ・フランスという駅まで歩いた。
高架になっているこの駅のベンチに座り、
雲がきれてきた東の空と、冬の弱い日差しに輝くセーヌと、
エッフェル塔の西に林立する高層ビルを眺めた。

パリにはじめて来たのは、小学生の時だった。
ざっと25年くらい前。
「ヨーロッパを見ときなさいね」と言って
母が、つれて来てくれた。
決して裕福ではない上に、当時、海外旅行は
相当高額だったから、かなり無理したと思う。

泊まったホテルは、
その高層ビルのひとつ(当時のホテルニッコー)だった。
真冬で、すごい雪がふっていた。
高層階のホテルの窓からセーヌを眺めて、
島の先に自由の女神の小さいのがあるなあ、とだけ思っていた。

その島が、白鳥の小道という名前がついていることも、
その島の先に、ベルトリッチが撮ったビル・アケムという橋があることも
すぐ目の前の建物が、ゴダールが撮ったラジオ・フランスであることも、
河の対岸に広がるのが16区で、ギマールの建築が点在していることも
知らなかった。

何より、その25年後に、まさか今度は、自分が親を連れて、
その16区を案内したり、ラパンアジルでシャンソンを聞いたり、
カフェフロールの2階で朝食をとっているなんて思いもしなかった。

そして、対岸のRERの駅から、
25年後の自分がこっちを眺めてるなんて思いもしなかった。

おそらく、さらに25年後の自分が、どこかから見てるような気がする。
ほとんど変わらないパリのどこかから。

当時、「ヨーロッパを見ときなさいね」と言って
連れて来てくれた母の期待には、
あまり応えられてないのかもしれない。

調子のいい話しだけど、
一方的に最大限の感謝はしている。
その時まわったパリもローマもロンドンもアテネも
幸せな後遺症のようになったから。



BEAUTIFUL WORLD
by ayu_transit | 2006-07-24 03:19